SUPERVISED BY — 監修者
伊藤 渚
監修者
伊藤 渚Nagisa Ito
STRAND PARTNERS

米国ビジネススクール卒業後、PwCニューヨークオフィス、アクセンチュア戦略部門を経て参画。グローバル視点でのコンサル・外資系企業への転職支援を担当。

プロフィール詳細 ›
中村 水藻
監修者
中村 水藻Mizumo Nakamura
STRAND PARTNERS

お茶の水女子大学卒業後、新卒でアクセンチュアに入社しシニアマネージャーまで昇進。ファーム内部での評価・昇進の実情を踏まえ、大手外資ファーム・ITコンサルへの転職支援を担当。

ANSWER — 結論

在籍確認は、応募先企業が「申告どおりの会社に、申告どおりの期間・立場で在籍していたか」を確かめる手続きで、方法は①書類の提出 ②電話での照会 ③リファレンスチェック/バックグラウンドチェックの3つです。職業安定法の指針により、採用企業が本人以外から応募者の情報を集めるには本人の同意が必要とされているため、電話や第三者への照会は同意書を取ってから行われるのが通例です。現職に知られたくない場合は、同意を求められた時点で「現職への連絡は内定後・退職の意思表示後にしてほしい」「書類で代替したい」と伝えれば、ほとんどの企業は調整に応じます。

OUR VIEW — STRAND PARTNERSの見解

「在籍確認を恐れて動けない人が多いが、実際のリスクは別の場所にある」

「応募したら現職に確認の電話がいくのでは」という不安をよく聞きます。しかし採用企業が本人以外から応募者の情報を集めるには本人の同意が必要とされており、黙って現職に電話がかかることは実務上まずありません。

実際に気をつけるべきは、リファレンスチェックへの同意のタイミングと、入社手続き書類の扱いです。この2つの段取りを知っていれば、在職中の転職活動で現職に知られる心配はほぼ制御できます。

在籍確認の3つの方法

「在籍確認」と一口にいっても、方法によって誰が・いつ・どこへ確認するかがまったく違います。まず全体像を押さえてください。

方法誰が確認するか主なタイミング本人の同意現職に知られる可能性
①書類の提出応募先の人事内定前後〜入社手続き本人が自分で提出低い(取得方法による)
②電話での照会応募先の人事、または委託された調査会社最終面接前後〜内定前後事前に同意を取るのが通例現職に電話する場合は高い
③リファレンス/バックグラウンドチェック応募先、または専門の調査会社最終面接前後〜内定前同意書・専用サービスへの登録が必須推薦者・照会先の選び方次第

前提として、職業安定法第5条の5と厚生労働省の指針では、採用企業などが求職者の個人情報を集めるときは、本人から直接集めるか、本人の同意のもとで本人以外から集めるといった適法・公正な手段によることとされています(厚生労働省 新潟ハローワーク「職業安定法に基づく指針」)。また、問い合わせを受けた側の会社も、個人データを第三者に渡すには原則として本人の同意が必要です(個人情報保護法第27条)。このため、まっとうな企業ほど照会の前に必ず同意を取ります。同意を求められたタイミングが、照会先やタイミングを調整できる唯一の機会です。

在籍確認はいつ行われる?選考段階別のタイミング

選考段階在籍確認の有無注意点
応募〜書類選考行われない応募しただけで照会されることは通常ない
一次〜二次面接ほぼ行われない職歴の矛盾がないかは面接での質問で確認される
最終面接前後〜内定前リファレンス/バックグラウンドチェックが入ることがある外資系・コンサル・金融・管理職採用で多い。ここで同意書を求められる
内定承諾後〜入社書類での確認が中心源泉徴収票・雇用保険被保険者証などを提出。この時点では退職を伝えた後のことが多い

つまり在籍中の人が気にすべきなのは、最終面接前後のリファレンス/バックグラウンドチェックだけです。ここで照会先とタイミングを自分でコントロールできれば、現職に知られる経路はほぼ塞げます。

電話での在籍確認では何を聞かれるのか

電話で照会する場合、かけてくるのは応募先の人事担当者か、委託を受けた調査会社です。確認されるのは基本的に事実関係です。

  • 聞かれることが多い:在籍の有無、在籍期間(入社・退職年月)、所属部署、役職・雇用形態
  • 通常は聞かれない:人事評価、給与額、退職理由の詳細、健康状態など

ただし、電話を受けた会社が何を答えるかはその会社の方針次第で、「本人の同意が確認できない照会には一切答えない」という会社も少なくありません。照会がうまくいかないと確認が長引くため、応募先から照会先・連絡先を聞かれたら、答えてくれる窓口(人事部など)を正確に伝えるのがスムーズです。

前職への在籍確認と「前職調査」(バックグラウンドチェック)

外資系企業やコンサルティングファーム、金融機関では、内定前に専門の調査会社によるバックグラウンドチェックが行われることがあります。代表的な確認項目は次のとおりです。

  • 職歴(在籍期間・役職)の照会:前職の人事部へ電話や書面で確認
  • 学歴の照会:卒業証明書の提出や学校への確認
  • 資格の確認、公開情報の調査(反社会的勢力との関係がないか等)

職歴の照会先は基本的に前職(すでに退職した会社)で、現職への照会は内定後・退職の意思表示後に回してもらえることがほとんどです。前職に照会されても、すでに退職しているので転職活動が問題になることはありません。照会の前には必ず同意書への署名を求められるので、その時点で「現職への照会は退職の意思表示後にしてほしい」と書面かメールで伝えておくのが確実です。

リファレンスチェックとの違い

在籍確認・前職調査リファレンスチェック
目的申告した経歴が事実かの確認働きぶり・人物の評判の確認
照会先会社の人事部・学校など本人が指定した上司・同僚(推薦者)
聞かれること在籍期間・役職などの事実強み・弱み、仕事ぶり、一緒に働きたいか
現職に知られないための対策照会のタイミングを退職の意思表示後にしてもらう前職の上司や、信頼できる現職の同僚を推薦者に指定する
当社経由の場合:リファレンスチェックやバックグラウンドチェックの有無・タイミングは事前にお伝えし、推薦者の選び方や、現職への照会を後ろ倒しにしてもらう交渉も当社から行います。「現職に知られたくない」は採用側も織り込み済みの前提なので、遠慮なく伝えて問題ありません。

現職への電話を避けたいときの頼み方(例文つき)

在職中の転職者が「現職への照会は困る」と伝えるのは一般的なことで、伝えたこと自体が評価に響くことはまずありません。頼むときは代わりの確認手段をこちらから提示するのがコツです。

例文(同意書を求められたとき、人事担当者へのメール)
在籍確認・経歴確認のご案内をいただきありがとうございます。手続きには喜んで協力いたします。
一点ご相談がございます。現在在職中で、まだ勤務先に転職の意向を伝えていないため、現職への直接のご照会は、内定をいただき退職の意思を伝えた後にしていただくことは可能でしょうか。
それまでの間の確認として、給与明細や雇用契約書の写し、前職の人事部へのご照会などで対応できればと考えております。ご検討いただけますと幸いです。

代替手段として使われるのは、給与明細・雇用契約書・社員証の写し(現職の在籍の証明)や、前職への照会(職歴の裏付け)です。どれが受け入れられるかは企業によって違うので、複数を提示して選んでもらうとスムーズに進みます。

在籍確認で求められる書類と入手方法

書類証明できること入手方法現職に知られるか
源泉徴収票その年の給与支払額(年収)勤務先から毎年交付される。前職分は退職時に交付手元のものを使えば知られない
雇用保険被保険者証雇用保険の加入(在籍)入社時に交付。会社保管の場合は退職時に受け取る会社保管の場合は依頼が必要
給与明細・雇用契約書現職の在籍・雇用条件手元の書類の写し知られない
退職証明書前職の在籍期間・役職など前職に請求する(労働基準法第22条で、請求があれば遅滞なく交付する義務)前職への依頼なので現職には無関係
在籍証明書現職に在籍していること現職の人事に発行を依頼依頼すれば知られる。退職の意思表示後に依頼するか、給与明細等での代替を相談

在籍証明書は現職への依頼が必要なため、在職中に求められたら「退職の意思表示後に取得して提出したい」と伝えるか、給与明細での代替を相談しましょう。入社手続きで提出する源泉徴収票には現職での支払額が記載されるため、選考で申告した年収と大きく違えば把握されます。

在籍確認で内定取り消しになるケース

在籍確認そのものを恐れる必要はありませんが、申告内容と事実が食い違うと、内定取り消しの理由になり得ます。典型的なのは次のケースです。

  • 在籍期間の水増し(短期離職を隠すために期間をつなげる、など)
  • 役職・雇用形態の偽り(契約社員を正社員と記載する、など)
  • 年収の過大申告(源泉徴収票で判明する)
  • 学歴・資格の偽り

在籍期間は雇用保険や社会保険の記録、年収は源泉徴収票で、入社手続きの時点で突き合わされます。月単位のズレのような悪意のない誤りでも、説明を求められることがあります。経歴は正確に書き、勝負は見せ方で行うのが唯一の正解です。見せ方は職務経歴書の書き方で解説しています。

現職に知られないために本当に気をつけるべきこと

在籍確認より、発覚の原因は日常の行動にあることがほとんどです。社用PC・社内ネットワークでの転職サイト閲覧、同僚への相談、SNSの公開設定、スーツでの出社の急増——典型的なパターンと対策は転職活動が会社にバレる5つの場面で詳しく解説しています。

在籍確認・前職調査のよくある質問

応募しただけで現職に在籍確認の連絡が行くことはありますか?

通常はありません。採用企業が本人以外から応募者の情報を集めるには本人の同意が必要とされているため(職業安定法の指針)、書類選考や一次面接の段階で同意なく現職に照会されることは、まともな企業ではまず起こりません。

在籍確認やリファレンスチェックは拒否できますか?

拒否自体はできますが、選考の要件になっている場合は選考が進められなくなることがあります。現職に知られたくない場合は、拒否ではなく「現職への照会は退職の意思表示後にしてほしい」「前職の上司を推薦者にしたい」と条件を相談するのが現実的です。

在籍確認の電話では何を聞かれますか?

在籍の有無、在籍期間、所属部署、役職・雇用形態といった事実関係が中心です。人事評価や給与額、退職理由の詳細は通常聞かれません。ただし何を答えるかは問い合わせを受けた会社の方針によります。

前職が倒産・廃業していて在籍確認ができない場合は?

源泉徴収票、雇用保険被保険者証、給与明細、ねんきん定期便など、手元の書類で在籍期間を示せます。照会先がないことを早めに応募先へ伝え、代わりに出せる書類を提示しましょう。

派遣社員や契約社員の経歴も在籍確認されますか?

されることがあります。派遣社員の場合、雇用契約を結んでいるのは派遣元(派遣会社)なので、照会先は通常派遣元です。職務経歴書には「派遣社員として○○社に派遣」と雇用形態を正確に書いておきましょう。

源泉徴収票で前職の年収は新しい会社に分かりますか?

分かります。入社年の年末調整のために提出する源泉徴収票には前の勤務先での支払額が記載されるため、申告した年収と大きく違えば把握されます。年収は正確に伝え、交渉は役職や担う役割を軸に行うのが得策です。

在籍確認をしない会社もありますか?

あります。日系企業の中途採用では、入社手続きの書類確認だけで、電話や第三者照会を行わない会社も多くあります。一方、外資系企業・コンサルティングファーム・金融機関や管理職採用では、バックグラウンドチェックが行われることが比較的多い傾向です。

在籍確認が原因で内定取り消しになることはありますか?

経歴に偽りがあった場合は、内定取り消しの理由になり得ます。在籍期間の水増し、役職や雇用形態の偽り、年収の過大申告などです。事実どおりに申告していれば、在籍確認が原因で不利になることはありません。